2026 年も、いよいよ夏本番を迎えました。
今年の RAD Studio に関する大きな話題といえば、AI エージェント「Kai」のリリースでしょう。Kai は大きな注目を集め、RAD Studio を使った開発に新しいワークフローをもたらしています。
本ブログでもこれまで、Kai に関するニュースや活用事例をご紹介してきましたが、今回は少し趣向を変え、スマートフォン向けのレトロゲーム制作に挑戦します。
最近は、「バイブコーディング(Vibe Coding) 」という言葉を耳にする機会も増えました。これは、作りたいものや実行したいタスクを自然言語(たとえば日本語)で AI に伝え、生成されたコードを利用しながら開発を進める手法です。
ネットミームには、「ぜんぜんわからない。俺たちは雰囲気だけで〇〇をやっている」という言い回しがあります。仕組みを十分に理解しないまま、なんとなくの感覚で物事を進める様子を表したものです。「バイブコーディング」という言葉にも、どこかそれに近い響きがあります。しかし、AI によるプログラミング支援がここまで進化した現在では、新しい開発スタイルの一つとして捉えることもできるのかもしれません。
そこで今回は、Kai を使ったバイブコーディングを実際に体験し、その感想を最後に共有したいと思います。筆者はプログラミングについては理解していますが、ゲーム開発に関する専門的な知識はほとんどありません。果たして、その状態からどこまでゲームを形にできるのでしょうか。
夏休み企画として、お気軽に読んでいただければ幸いです。
Table of Contents
あなたも今日からゲームクリエイター?
本題に入る前に、近年のゲーム開発を取り巻く状況を少し整理しておきましょう。
現在、PC や家庭用ゲーム機、スマートフォン向けのゲームでは、大手ゲーム会社が多くの開発者を集め、長い開発期間と大規模な予算をかけて制作するタイトルが数多く存在します。開発予算が 100 億円を超えるタイトルも珍しいものではありません。
一方で、個人開発者や少人数のチームから生まれたゲームが、世界中のプレイヤーに支持され、大きな成功を収める例もあります。
『Minecraft』はその代表例といえるでしょう。スウェーデン出身のプログラマー、Markus Persson 氏によって開発が始まったこの作品は、2009 年に最初のバージョンが公開されました。その後も発展を続け、現在でも世界中で親しまれるゲームとなっています。
2026 年には『めっちゃカメレオン』がリリースから 1 ヶ月を待たずに 1500 万本のセールスを突破し、話題となっています。
その他『Papers, Please』のような、入国審査官という一風変わった題材をゲームに取り入れ、独自のゲーム性や世界観によって高い評価を得た作品もあります。
これらの作品に共通しているのは、必ずしも大規模な開発環境から生まれたものではなく、個人や少人数の開発者が持つアイデアやこだわりが、多くのプレイヤーを引きつけたという点です。
「自分もゲームを作ってみたい」そう考えたことのある人は少なくないでしょう。
しかし、頭の中にあるアイデアを実際のゲームとして形にすることは、決して簡単ではありません。
ゲーム制作には、プログラミングだけではなく、キャラクターや背景などのグラフィック制作、音楽や効果音の作成など、さまざまな技術が必要になります。
これらを一人ですべて身につけるには、多くの時間と労力が必要です。そのため、魅力的なアイデアがあったとしても、「作りたいけれど作れない」という状況は少なくありませんでした。
しかし現在、その状況を変えつつある技術があります。それが AI による開発支援です。
Kai で体験するゲーム開発の世界
今回は、本格的なゲーム開発を目指すものではありません。「夏休みの工作」のような感覚で、ゲーム制作通じてバイブコーディングを体験していきます。
作成するのは、昔懐かしい縦スクロールシューティングゲームです。ゲームの世界は、いわゆる「8ビット風」のドット絵で表現します。この形式であれば、グラフィックなどのアートワークも比較的シンプルにできそうです。
基本的な仕様は、次のとおりです:
- 8ビット風のレトロアーケードゲーム
- 縦スクロールシューティング
- スマートフォンで動作
プログラミングにはKaiを全面的に使用し、バイブコーディングによって制作します。使用する AI モデルは OpenAI の Codex で、Plus プランを利用しました。
STEP1:プロジェクトの作成
早速 RAD Studio を起動し、Kai のチャット機能を使用してプロンプトを入力します。
ゲームの仕様を一気に伝えることも可能ですが、今回は少しずつ指示をしていきたいと思います。
図は、RAD Studio を起動し、マルチデバイスアプリケーションのプロジェクトを新規作成した状態です。
Kai のチャットウインドウを開き、以下のように指示をしました。
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縦スクロールのシューティングゲームを作りたい ドット絵のキャラクターを使用し、昔のアーケードゲーム風の雰囲気 iOS, Androidで動作させることを前提とする フレームワークはFMXを使用する まずは以下の基本的な部分だけ作成する - 1980's アーケードゲーム風のタイトル画面 - 宇宙を連想させる背景 - プレイヤーが操作をする戦闘機風の宇宙船 - 自機はスワイプ操作で移動で横移動できる - X軸方向の移動を可能とし、Y軸方向の移動は不要 プロジェクトやファイル類の保存をおこない、ビルドエラーが発生しないことを持って終了とすること |
その結果がこちらです
背景の星空が 1980 年代のアーケードゲーム感を醸し出しています。
スマートフォンのタッチパネル操作で、自機が動作します。
STEP2: 基本機能の実装
次に、ゲームの基本的な部分をつくっていきます。Kai には、次のような指示を伝えました。
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敵宇宙船が出現し自機を攻撃する 自機はFIREボタンをタップすることで1発だけ弾を発射できる その他1980年風アーケードゲームの雰囲気を意識すること 自機は3機あり、3機とも破壊されるとゲームオーバー 自機が被弾した場合は一度リセットされ X LEFT の表示後にゲーム再開 |
実行結果がこちらです。
Androidスマートフォンで遊んでみたのですが、「弾を発射し、敵宇宙船を破壊する」という 1980 年代定番のゲームテーマが再現されています。ただ、「雰囲気だけは80年代」なのですが、少し物足りなさも感じます。
STEP3:「こだわり」を実装する
STEP3では、筆者の頭の中にある「ゲームの世界」をKaiに伝えていきます。もちろんそれは日本語で伝えます。
こだわり1:1980 年代風のドット感
今のバージョンの文字はテキストをそのまま出力しています。つまり「文字フォントが滑らかすぎる」という、通常とは全く逆の問題が発生しています。文字の出力はドット文字に置き換えたいです。
こだわり2:1980 年代風の効果音
ゲームのところどころには「電子音」という表現がふさわしい、チープな、しかしレトロ感が伝わる効果音や BGM を配置します。この効果音の作成についても Kai に依頼してみましょう。
※ 補足: 効果音のようなメディアファイルも Kai を使用して作成することが出来ましたが、今回は、別途作成したものを使用しました。
こだわり3:ゲーム性の向上
ゲームシナリオとしては、スクロール型シューティングの定番ともいえるボスキャラを出現させてみましょう。それは、1983 年に発表された名作ゲーム『ゼビウス』に登場した浮遊要塞『アンドアジェネシス』のような画面を埋め尽くすような巨大なものを出現させてみたいものです。
ボスキャラはゲームのクライマックスに登場させるものですが、今回は開発途中のため敵キャラを5機倒した時点でボスキャラを登場させます。
その他、デバッグ中に気がついたことを Kai にいれつつ、ゲームを完成させていきます。
レトロな縦スクロールシューティングが完成!
完成バージョンをご覧ください。文字をドット化したことにより、1980 年代のテイストが一層濃くなっています。
さらに巨大なボスキャラも登場します。『アンドアジェネシス』 と比べるとかなり残念な仕上がりです。でも、1980年代のゲームを楽しむときに、時として視覚よりもプレイヤーの想像力が必要となるという意味ではこれはこれで「当時っぽい」のかもしれません。
最後はボスが大爆発してミッションコンプリートです。
また、BGM については 音楽生成AIである SUNO でつくってみました。下のメディアプレーヤーから試聴してみてください。
まだ改善の余地がありますが、ひとまずはこのバージョンを持って完成としたいと思います。
まとめ:バイブコーディングを終えてみて
バイブコーディングを終えて、ひと言で感想を述べるとすれば、コードのがブラックボックス化への懸念です。自分が制作に関わったコードであるにもかかわらず、その内容を十分に理解できず、品質を担保することができません。
品質を確認するためにソースコードを開いてみても、内容を読み解くことは容易ではありません。冒頭の言葉を借りるなら、「ぜんぜんわからない。俺たちは雰囲気だけで動作テストをやっている」という状態に陥っています。
これがどれほど危険なことであるかは、あらためて説明するまでもないでしょう。
一方で、バイブコーディングには、これまで技術や経験の不足を理由に諦めていた創作を、実際の形へ変える力があります。
AI の力を借りてでも、まずは作ってみる。これが大切なのかもしれません。
プロジェクトの保守性やコードの安全性は、もちろん重要です。しかし、難しいことを抜きにして、自分が思い描いたものを実際に完成させたときの手応え。その体験が、次の改善や学びへ進むきっかけになるのかもしれません。
ゼロとイチの違いは、とても大きいのです。
参考
Reduce development time and get to market faster with RAD Studio, Delphi, or C++Builder.
Design. Code. Compile. Deploy.
Free Delphi Community Edition Free C++Builder Community Edition









