この記事は、Ian Barker氏のブログの抄訳です

今年は間違いなくAI(人工知能)が台頭する年になりつつあり、あらゆる種類のIDEソフトウェアに搭載されるのも時間の問題でしょう。Microsoft社が人工知能や機械学習（ML）において素晴らしく強力なChatGPT、Dall-E、および同様の進歩をもたらすOpenAIに対して少なくとも100億ドルの多額の投資を行ったことで、世間から注目も、そしてその勢いも本格化してきました。これはMicrosoft社の勇敢な行動であり、Googleの親会社であるAlphabet Inc.が、ChatGPTと同じ対話型AIのライバルとされるGoogle Bardを宣伝する際に、(宣伝上の)大きな失敗をしてしまったため、その足元をすくわれたようです。現在、AIはちょっとしたブームになっており、機械学習やAIをタイトルに組み込んだ（あるいは少なくともそう主張する）アプリが急増しています。特にChatGPTは最近、TVやメディアなどで大きく取り上げられる場面も増えてきており、その注目度の高さが覗えます。

しかし、大きな疑問は、とても強力なAIが本当に私たちの仕事を奪ってしまうのだろうか?ということです。

LSP、コード補完、エラーインサイトはAIの一種ですか？

なるほど、これはいい質問ですね！　RAD Studio 11.3には、多くの素晴らしい新機能と改良が行われています。特にLSP（Language Server Protocol）は、その品質と信頼性を向上させるために、多くの改善が行われました。

LSPは、キーボードのドット(.)を入力したり、CTRLとSPACEを押したときに、潜在的な機能、メソッド、プロパティを提案してくれる仕組みのバッググラウンドをもつ、いわば「魔法」です。エラーインサイトのような便利な機能はよく知らなければ、インテリジェンスの塊のように見えることもあります。実際、Microsoft製品の同様の機能は「intellisense(イン)テリセンス」と呼ばれており、「賢さ」と「便利さ」を併せ持つ心強い味方です。

時々 LSP、コード補完、エラーインサイトは、まるで生きているかのように見えることがあります（特に11.3では、堅実で大幅な改善が見られます）。これは今日の複雑なソフトウェアでコーディングする際、とても有用であり、むしろソフトウェア開発に携わる立場であれば、不可欠だと感じることもあります。しかし、現実には、RAD Studioの場合はDelphiやC++のコードという特定のタスクに特化した、非常に高速でスマートなインデックス作成ツールに過ぎないのです。「賢く」、「便利」ですが、まだ知性を持ってはいません。

ChatGPTはなぜAIを大きく進化させたのでしょうか？

ChatGPTは、数十億のトークン（知識要素）を持つ大規模な言語モデルです。これまでの大規模言語モデル（LLM）と比べても、桁違いの大きさかもしれません。最近リリースされたChatGPT4は、さらに進化し、画像を理解できるようになっただけでなく、誤回答を防ぐための保護手段も備えています。

ChatGPTは、用意されたライブラリや返信候補の選択から回答を提供するのではなく、独自の結論を導き出すかのように回答を作成し、複数回答の会話を行うことができる点が大きく異なります。直感と推論から導き出される一見複雑な対話を提供します。

コンピュータ科学者であり倫理学者でもあるジョセフ・ワイゼンバウムの「Eliza」は、事実上、大きなIF文の集合であり、チャットボットの初期型と比較すると、その性能はほとんど比べものにならないほどです。ジョセフ・ワイゼンバウムは、真のAIを意図的に作ろうとしたのではなく、パロディとして「Eliza」を設計したと語っていますが、「Eliza」に対する反応は、真のAIの可能性に対して社会が慎重であるべきだと確信させるに十分だったようです。ジョセフ・ワイゼンバウムは2008年に亡くなったので、ChatGPTのようなものを実際に見ることはできませんでしたが、私たちと同じように感銘を受け、少し不安にもなっただろうと思います。

ChatGPT AIはソフトウェア開発者にとって何ができるのでしょうか?

その答えは、とてもたくさんあります。質問に答えてくれたり、エラーを見つけるのを手伝ってくれたり、コードを書いてくれたりすることもあるのです。それは同時に驚くべきことであり、恐ろしいことでもあります。

例えば、ChatGPT（2023年3月版）に、「Hello blog」というというメッセージボックスを表示する簡単なプロシージャを作ってもらいました。難しい言葉ではありませんが、ChatGPTがテンプレートではなく、本物のコードを作成してくれるかどうかが分かるほど珍しい言葉です。

その結果がこちらです。

正解です。ブラウザのコードラッパー構文が強調表示を「Pascal」ではなく「Arduino」と表示されていたのには少し笑いましたが、それ以外は正しい結果が得られました。

コンピュータを勉強しているのですが、ChatGPTは宿題をやってくれるのですか？

筆者が出した「hello worldのプロシージャを作る」という質問は、まさに高校生に質問するような内容だったのです。ChatGPTは、AIというとても便利な力によって受験に合格したい1000人の受験生を楽にする秘密のツールになることは間違いないでしょう。ChatGPTは、単純な手続きよりもはるかに複雑なことをすることができます。コードの最適化、デザインパターンの作成、Webサービスのインターフェイスの作成など、実にさまざまなことが出来るのです。

RAD Studio IDEにChatGPTを組み込むことは可能でしょうか？

ChaptGPT は非常に優れた機能を備えているため、RAD Studio IDE に直接組み込むのはクールかもしれません。そうすれば、コード エディターを離れることなくコードを記述および作成できるようになります。 幸いなことに、他の多くの Delphi 開発者も、これは面白いアイデアであると考えているかもしれませんね。

RAD Studio Alexandria 11.3 には、多くの優れた修正、改善、機能強化が含まれています。RAD Studio 11では、ToolsAPIが大きな注目を集めました。これは、開発者がガター (行番号がある場所) やプログラム コードの個々の行などの IDE およびコード エディター ウィンドウの領域と直接対話できるようにする、ユニット、クラス、およびインターフェイスのセットです。

ToolsAPIとコードエディタへの変更の詳細については、こちらのdocwikiをご覧ください。ChatGPTはRAD Studioに組み込むことができます。しかし、いくつかの注意点があり、それはこのブログの最後で説明します。

RAD Studio IDEにChatGPT AIを組み込むには?

筆者が見たChatGPTを取り入れたベストケースの1つは、GDK SoftwareのMarco Geuzeが作成し、デモしているセッションです。Marcoのセッションは最近のDelphiConの中でも非常に良く出来ており、とても興味深い内容でした。

Marco が ToolsAPI を使用してRAD Studio のコードエディタで ChatGPT に Delphi のプログラムコードを自動的に作成させる様子をビデオでご覧ください。

Marco GeuzeのRAD Studioアドオンのソースコードはどこで入手できますか？

MarcoのGDK Software GitHubアカウントで、ChatGPTアドオンのフルソースのリポジトリは、以下の通りです。

https://github.com/GDKsoftware/DelphiCon2023

またGDKは、彼らがプロジェクトで使用している独自のToolsAPIヘルパーライブラリも持っており、GitHubで公開しています。

https://github.com/GDKsoftware/ToolsAPI-helper

RAD StudioにChatGPT AI を組み込むための他の選択肢は?

ChatGPTを使用した RAD StudioのAIプラグインのデモを見たのは、確かにMarco Geuzeが最初でしたが、彼のコードリポジトリだけが、RAD Studio からAIプラグインの利用を可能にする方法ではありません。実は筆者がこの記事を書いている時点では、RAD Studioで利用できるChatGPTプラグインがあと少なくとも2つあります。まだどちらも試す機会がありませんが、このテーマへの関心の高さを目の当たりにして、とてもわくわくしています。

ChatGPTのAIに仕事を奪われるのでしょうか？

さて、これは本ブログのテーマであり、今話題になっている問題です。

良いニュースとしては、現時点でのChatGPTでは、実用的なDelphiコードを作成するには、まだ時期尚早のようです。

Marco Geuzeのブログでは、彼が得た多くのエラーに関する情報を交えて説明しています。

Googleで検索、あるいはMicrosoft Edgeをお使いの方はブラウザの右側に表示される「Bing ChatGPT-powered AI search」ボタンを使うと、このような答えが返ってきます。

結論としては、現時点では、我々の開発者の仕事が奪われることはなく、今のところはまだ安全です。ただし、OpenAIは何十億ドルものMicrosoft社からの資金援助にも支えられて、日々進化しています。Alphabet Inc.やMetaもこれに追従し、技術的に追いつく日もそう遠くありません。AIは新しいソフトウェアの最先端技術なのです。筆者は38年間ソフトウェア開発業界にいますが、間違いなく、ここ最近の中でとても大きな技術革新が起こっていると感じています。ムーアの法則に相当するAIが存在するかどうかはわかりませんが、もし同じような法則で、洗練度と能力が指数関数的に向上すれば、新しいAIがソフトウェア業界の支配者に君臨するかもしれません。

唯一の救いは、もしも私たちが不運にも就職活動をすることになった場合、ChatGPTが非常に説得力のある履歴書や志望動機の書類の作成を手助けしてくれることでしょう。ただし、ChatGPTに「open the pod bay doors」を頼むのはやめておきましょう。