Delphi 13.1 では、新たに Arm64EC(Windows on Arm) がサポートされました。
しかし、現時点では多くの開発者が Intel / AMD 環境を使用しており、「自分にはまだ関係ないのでは?」と感じる方も多いかもしれません。
本ブログでは、Arm64EC を取り巻く現状と、なぜ Delphi がこのタイミングで対応したのかを解説します。
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Arm64ECを取り巻く環境の変化
現在、Windows PC における ARM の普及はまだ限定的です。
例えば、2024年時点では ARM ベースの Windows PC のシェアは数%程度と、まだ少数派とされています。
しかし、状況は確実に変化しつつあります。
近年では、
- Copilot+ PC など ARM ベースの新しい Windows PC の登場
- Snapdragon X シリーズによる性能向上
- ノートPC市場での低消費電力ニーズの増加
といった背景から、ARM PC は今後大きく増加すると見込まれています。
特にノートPC分野では、今後数年でARM の比率が大きく伸びる可能性が高いとされています。
なぜ ARM へシフトするのか
ARM が注目されている理由は明確です。
- 消費電力が低く、バッテリー駆動時間が長い
- 発熱が少なく、モバイル用途に適している
- AI処理(NPUなど)との親和性が高い
こうした特徴から、ノートPCや次世代の「AI PC」においてARM が採用されるケースが増えています。また、Apple が Intel から ARM(Apple Silicon)へ移行し成功していることも、この流れを後押ししています。
なぜ Arm64EC なのか
ARM への移行は単純ではありません。
その理由は、多くの Windows アプリケーションが以下のような既存資産に依存しているためです。
- 既存の x64 DLL
- COM コンポーネント
- 長年運用されている業務アプリ
これらをすべて ARM 向けに移行するのは現実的ではありません。
そこで登場したのが「 Arm64EC」 です。
Arm64EC の最大の特徴は、以下の通りです。
- アプリ本体は ARM ネイティブで動作
- 既存の x64 DLL をそのまま利用可能
つまり、既存資産を活かしたまま段階的に ARM へ移行することが可能になります。
これは、Windows が ARM へ移行するための「橋渡し」となる技術です。
Delphi が Arm64EC に対応した理由
Delphi 13.1 が Arm64EC をサポートした背景には、この「将来の変化への対応」があります。もし ARM が主流になった時に対応するのでは遅く、その時点ではすでに開発者は移行を迫られています。
Delphi は、「既存資産を活かす開発スタイル」、「長期運用される業務アプリ」を重視する開発環境です。
そのため、以下のような理由によってArm64EC をできるだけ早い段階でサポートすることを目的としています。
- 今すぐ必要ではないが、将来必須になる技術
- 既存資産を活かしたまま移行できる技術
現時点での制限事項
Arm64EC には、Delphi側の制限およびプラットフォーム仕様に起因する制約があります。
Delphi Arm64EC の制限
- 動的パッケージ(BPL)は未対応
- inline ASM は使用不可
Arm64EC(Windows仕様)の制限
- 一部 Windows API に制約あり
- 純粋な Arm64 DLL は利用不可
実行環境の制約
- Intel / AMD 環境では実行不可
- Windows on Arm 環境が必要
そのため、現時点ではすべてのプロジェクトで 導入する必要はありません。
今後の展望
Arm64EC はまだ発展途上の機能です。
しかし、Delphi ではこれまでも新しいプラットフォームやツールチェーンにおいて、バージョンアップを重ねながら段階的に改善が行われてきました。
例えば、64-bit コンパイラや C++ の新しいツールチェーンにおいても、初期の段階ではいくつかの制約がありましたが、現在では実用的なレベルまで機能が拡充されています。
Arm64EC についても同様に、今後の Delphi の進化の中で、機能面や開発体験の向上が段階的に進んでいくことを目標としています。
特に ARM PC の普及が進めば、 Arm64EC は重要なターゲットの1つになる可能性があります。
まとめ
Arm64EC は現時点では必須の機能ではありません。
しかし、以下の点から非常に重要な技術です。
- Windows の ARM 化に対応するための技術
- 既存の x64 資産を活かした移行が可能
- 将来的に需要が増加する可能性が高い
今すぐ導入する必要はなくても、「どのような技術か」を理解しておくことは、今後の開発において大きな意味を持ちます。
Arm64EC は現時点で必須の機能ではありませんが、 将来に備えて選択肢として認識しておくことが重要です。
関連情報
Arm64EC の詳細な仕様や移行方法については、以下のドキュメントを参照してください。
Reduce development time and get to market faster with RAD Studio, Delphi, or C++Builder.
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Free Delphi Community Edition Free C++Builder Community Edition







