RAD Studio / Delphi / C++Builder 10.3.3は、2019年11月21日(米国時間)にリリースされました。この新しいリリースでは、いくつもの重要な改善点が追加されています。この記事では、IDEの改善や変更について見ていきましょう。
Table of Contents
機能
エディタータブの修正状態表示
10.3では、IDEのルック&フィールを改善しました。この作業は慎重を期して行われ、直接的ないしはIDEそのものをベースとしたUI規則に基づき、長年にわたって蓄積されてきた数多くのUIに関する問題を解決しています。その結果、IDEは、クリーンでモダンになり、ライトビューとダークビューの双方で、外観も使用感も改善されています(10.2.x以前と10.3.xを比較してみれば、その違いは明らかです)。私たちは、IDEに磨きをかけ、クリーンにしつつも、同じUI要素、同じツールバーなどを保持するよう気を付けました。10.3をリリースした際に、ほとんどのUI機能は残すようにしていましたが、いくつかは含まれていませんでした。今回、10.3.3でこれらを再導入しています。
これらのうち、多くのお客様が要望されていたのは、エディターでファイルを変更したことを容易に確認できる機能です。以前は、エディタータブにとても小さい赤鉛筆がタブアイコン上に描かれていましたが、これはサポートされなくなりました。RAD Studio 10.3では、ファイルに対する修正がまだ保存されていない時に、この状態が再びエディタータブに表示されるようになりました。
10.3.2でのエディタータブは編集済みファイルを明示しない
10.3.3のエディタータブでは編集後に未保存のタブを明示する
RAD Studioは、ファイルが修正されるとエディタータブにドットを表示します。
新しいルック&フィールを維持するべく、小さい画像(6~8ピクセル高)のオーバーレイではなく、エディタータブに大きなドットが表示されます。よりはより大きく、視認も容易です。他のエディターでもよく見るインジケーターでしょう。上図では、Maze.CellユニットとMainFormの両方の変更がまだ保存されていません。ドット上にマウスを移動させると、タブを閉じるための[X]ボタンが表示されます。
IDEのフォントとフォントサイズの変更
10.3でIDEがアップデートされる前に提供されていた機能のうち10.3.3で改めて再導入した機能としては、IDEフォントとフォントサイズの変更があります。これは、IDEのUIを大きく表示したいときに便利です。特に、High DPIスケーリングをまだサポートしていない(ロードマップでは、将来バージョンでの提供を計画しています)ため、大きめのテキスト表示は有効です。この機能は、10.3.3で新たに、そして改善を加えて復活させました。
IDEのメインフォントとしてSegoe UI14ptを使用したRAD Studio
メインウィンドウのすべての項目は、レジストリで設定したフォントの変更が反映されていることが分かります。メニューバー(および表示した際のメニュー項目)、プロジェクトマネージャ、構造ペイン、オブジェクトインスペクタなどのドッキングウィンドウ、エディタータブなども同様です。IDEは、4ピクセルのグリッド上に要素を整列させるなど、同じUIデザインルールに従います。こうした動作は、カスタムフォントの場合でも同様です。
オプションダイアログのようなダイアログでは、この設定は参照しません。その理由は、ダイアログは、すでにシステムが要求する最小のスクリーンサイズになっているからです。また、真のHigh DPIサポートにフォーカスできるように、この作業はメインウィンドウのみに限定しています。しかし、特に視力を理由とした要求に応えるため、これを改めて再導入しようと考えました。
そして、今回の実装は、以前導入したものよりもよりクリーンな機能を提供しています。メインウィンドウ全体にわたって適用され、要素サイズの変更もフォントサイズに基づいて適切に実行されます。
この設定は、変更前にIDEを終了させる必要があるため、オプションダイアログには設定項目がまだありません。そのかわりに、レジストリを変更する必要があります。そのため、レジストリ編集に自信がある方のみが、行うようにしてください。IDEを終了して、レジストリエディター(regedit)を開きます。
- HKCUSoftwareEmbarcaderoBDS20.0Theme を表示します。
- FontNameに、Segoe UIなどのフォント名を引用符なしで指定します。無効なフォントを指定した場合には、デフォルトのシステムフォントが使用されます。
- FontSizeに、フォントサイズをポイント単位で、DWORD値として指定します(レジストリエディターでは、デフォルトで16進数を使用します。これは、「値の編集」ダイアログで10進数に変更することで、切り替え可能です)。フォントサイズの値に制限はないので、IDEの表示がおかしくなるような設定も出来てしまいます。8から20ポイント程度の指定を推奨します。
- また、Toolbarsキーを削除しておくことも推奨します。これは、ツールバーの位置を、フォント変更を行う前の場所ではなく、変更後の状態で正しい位置に再計算されるようにするためです(ツールバーとメニューは、スケールの影響を受けます)。
ウェルカムページの微調整
ウェルカムページは、最近使用したりお気に入りのプロジェクトを表示したり、興味のありそうなイベント、最近のYouTubeアップロードなどを表示する便利なページです。今後のリリースでも、ウェルカムページの修正を行う予定です(ぜひ、フィードバックをお寄せください)が、10.3.3でも微調整を加えました。
- FMXに加え、新しいVCLアプリケーションを作成するためのショートカットが追加されました。
- イベントおよびYouTubeフィードがより読みやすく、クリーンになりました。
- いくつかの新しいアイコンが追加されました。
- イベントとYouTubeフィードの非表示は、右下の小さなリンクで行うようになりました。
RAD Studio 10.3.3のウェルカムページ
テーマの改善
コード補完のドロップダウンが、テーマ化されました。
コード補完ウィンドウの表示比較(上:10.3.2、下:10.3.3)
また、余白の改善と、IDEの他の場所で使用されているリスト項目の高さに合わせるために、項目の高さがごくわずか(数ピクセルのみ)大きくなりました。以前は12個の項目が表示されていたコード補完ウィンドウは、10個の項目が表示されるように変わりましたが、それでも役立つ量です。ウィンドウの端や角をクリック&ドラッグすることで、アイテム数に合わせたウィンドウリサイズが可能です。
これにより、Windows 7以来のバグも修正されました。コード補完ウィンドウの影が正しい位置になく、ずれてしまい、ウィンドウ上部に太いバーが表示されるものです。これは、補完リストボックスが使用している一般的ではないスタイルとの組み合わせに影響を与えるWindows 7で加わったWinAPIのバグに起因すると考えられます。10.3.3では、影が正しくレンダリングされるだけでなく、補完ウィンドウがよりクリーンに見えることが分かります。
同時に、10.3.2で加わったバグについても修正しました。補完ウィンドウでハイライトされた項目が、エディタスキームのハイライトカラーではなく、IDEのハイライトカラーを使用しており、特にエディタではクラシックテーマを用いていると選択項目が読みにくいことがありました。これは、現在ではエディターカラーを使うようになっています。
クラシックエディターカラースキーム(DOS IDE)を用いた10.3.3でのコード補完ウィンドウ
品質
ここまで、機能強化に加えいくつかの品質改善について触れてきましたが、10.3.3では、他の多くの領域で、IDEに関する問題に対応しています。
- IDEウィンドウのデバッグモードと編集モードの切り替え時、復元/最大化する時、モニター間の移動を行った時など、IDEウィンドウのサイズ変更で発生する一連の問題への対応
- ウィンドウの境界を含むいくつものウィンドウに関するUI上の細かい修正
- さまざまなテーマの修正、IDEタイトルバーのコントロールに関する修正を含む
- エディタータブ、IDEメニュー(特にポップアップメニュー)、およびエディタータブメニューにおける不具合の修正
- その他のIDEの不具合修正
まとめ
Delphi / C++Builder 10.3.3のIDEはより高速で、そして無くなっていた機能のいくつかが復活、強化されています。アップデートサブスクリプションに加入されている方は、今すぐ10.3.3をインストールしてください。
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