本日、Embarcaderoは、RAD Studio、Delphi、C++Builder 12.2 Athensをリリースしました。
RAD Studio 12.2 Athensリリースは、IDEへの初の生成 AI統合、Web開発向けの新しいテンプレートライブラリ、新しいC++ Win64 Clangベースのコンパイラとツールチェーンへの大幅な機能強化、64-bitアプリとして構築された新しいDelphiコンパイラなど、多くの機能を提供しています。このブログでは、このリリースの主要な機能強化に焦点を当て、詳細情報へのリンクを提供します。
Table of Contents
RAD Studio 12.2の主な新機能
モダナイズされたC++コンパイラとツールチェーンのランタイムパッケージ、コンパイル速度など
RAD Studio 12.1でWin64向けの新しいClangベースのC++コンパイラがリリースされたことに続いて、今回のアップデートでは、新しいC++ツールチェーンに対応したランタイムパッケージの使用と生成、すべてのRAD Studioコンポーネントパッケージのサポート、CPU の並列実行に対応したバッチコンパイル(-jobs パラメータ)による驚異的なコンパイルパフォーマンス、コンパイラとRTLライブラリの品質向上に重点的に取り組むなど、多くの機能が追加されました。以前の 12 リリースと同様に、新しいツールチェーンに加えて、古いC++ Win64ツールチェーンも引き続きご利用いただけます。
新しいC++ツールチェーンで実行時パッケージを有効にするには、下図のように設定します。
64-bitバージョンのDelphi Windowsコンパイラ
RAD Studio 12.2 では、64-bitバイナリバージョンのDelphi Win32およびWin64コンパイラが搭載されており、新しいコンパイラの64-bitの広大なメモリ空間を利用して、単一の実行形式でより巨大なアプリケーションをビルドできるようになります。またこの新しいコンパイラは、外部コンパイルを使用する際にコマンドラインおよびIDEから利用可能で、非常に大規模なコードベースを持つお客様に焦点を当てているため、Enterprise版およびArchitects版でのみ提供されています。
プロジェクトオプションのダイアログボックスで、外部64-bitのDelphiコンパイラを使用する方法は、以下のとおりです。
注目すべきは、RAD Studio 12.0 でのリリース以来、新しいC++ Clangコンパイラは64-bit バイナリであるということです。
Smart CodeInsight: コーディングにAIのパワーを活用
AI LLMをコーディングに活用することがますます一般的になり、これらのツールの品質も向上しています。このため、RAD Studio 12.2では、新たにAIプラグインのオープンアーキテクチャを導入され、3つのオンラインソリューション(OpenAI、GoogleのGemini、AnthropicのClaude)と1つのオフラインソリューション(Ollama)等をすぐに使用できる形式でサポートしています。
下図は、[ツール][オプション]-[IDE]-[Smart CodeInsight(スマート支援機能)]の設定の例です。
このアーキテクチャは、複数の用途に対応しています。すべてがオプションであり、デフォルトでは無効になっています。複数のプロバイダを利用できるようにして、有効にするプロバイダをユーザーが選択できるようにしています。プライバシーを最大限に高めるために、ローカルにインストールされたオフラインソリューションも用意しています。これは、他の IDE が提供するものとは異なり、単一の独自ソリューションや、ユーザーの制御なしにバックエンドの1つに仲介するものとは異なります。Smart CodeInsight では、AI を使用するかどうか、またどのように使用するかをユーザーが決定できます。また公開されたREST APIを呼び出して独自のソリューションを提供する追加のプラグインを作成することもできます。
RAD Studio IDEは、新しいAIツールを2つの異なる方法で提供します。まず1つ目はドッキング可能な汎用AIチャットペインです。
2つ目は、選択したコードに対して複数のコマンドを発行できる新しいエディタのメニューです。
エディタの機能向上: フォーカスモード、スクロールバーの注釈
コーディングを行っている最中では、IDEの多くのペインや機能に邪魔されたくない場合があります。新しいRAD Studioのフォーカスモードでは、それを実現します。IDE にはエディタしか表示されないので、作業を妨げられることがなくコーディングに集中することができます。
もう一つの非常に便利な機能は、新しいスクロールバーの注釈です。エディタのスクロールバーには、下図のように変更箇所、ブックマーク、エラー/警告箇所などを一目で分かるように表示されます。
また最近導入された分割ビュー、ツールバー、High DPI対応などについても品質向上が施されています。
WebStencilsテンプレートライブラリ
RAD Studio バージョン12.2では、WebBrokerおよびRAD Serverテクノロジーに対するHTMLファイルのサーバーサイドのスクリプトベースの統合/処理を実現するWebStencilsが導入されました。この柔軟な機能により、RAD Studioのサーバサイドアプリケーションから提供されるデータを活用し、あらゆるJavaScriptライブラリをベースとしたモダンなWebサイトの構築が可能になります。
WebStencilsの主な目的は、Webテクノロジー(WebBroker、DataSnap、RAD Server)を採用し、サーバーサイドスクリプトを提供することで、ナビゲーションWebサイトを支援することです。例えば、WebStencils を使用すると、標準ツールを使用して HTML ページを生成し、任意の CSS および JavaScript ライブラリを採用しながら、データベース クエリの結果など、Delphi または C++Builder アプリケーションから生成されたページからデータを追加する機能を保持できます。
ここでは、オブジェクト (この場合は ClientDataSet) をスクリプトに渡し、特定の名前「dataset」を付けるために使用されるサンプルコードを紹介します。
そしてデータセットの各レコードを順に処理し、HTMLコードにフィールド値の一部を追加するサンプルスクリプトの例です。
これにより、以下のようなWebページが作成されます。
さらに、WebStencilsはWeb開発ソリューションであるHTMXの基盤としても利用できます。HTMXのページはサーバーサイドのコード生成のメリットを享受し、コンテンツの更新にはRESTサーバーに接続します。DelphiのWebテクノロジーは、非常に高い品質レベルでページ生成とREST APIを提供します。
C++BuilderのVisual Assist統合の拡張
Visual Assistの統合に関しては、変数の導入、使用箇所からの作成、メソッドの抽出という3つの新しいリファクタリングを含む新機能を搭載し、品質と安定性の大幅な向上を実現しています。
以下は、変数の導入リファクタリングのダイアログの例です。
そして下図は、Extract メソッドのダイアログの例です。
モバイル開発と外部ライブラリリンクの改善
RAD Studio 12.2では、iOSとAndroidの両方でDelphiのモバイル開発が大幅に改善されています。Appleプラットフォームのサポートを強化するために、リンカを最新バージョンに更新しました。これにより、Firebase iOS SDK など、Xcode で記述された iOS 静的ライブラリをリンクできるようになりました。
Androidのサポートに関しては、お客様がパッケージ化と展開をより細かく制御できるようにAndroidプロジェクトのオプションにあるツールチェーンにDexファイルの圧縮とネイティブライブラリファイルの圧縮のオプションを追加しました。さらに、Androidでは、AndroidマニフェストファイルのtargetSdkVersionをプロジェクトオプションダイアログで設定できるようになりました。また、Androidライブラリ(「.aar」ファイル)のインポート機能も追加しました。例えば、Facebook SDK for AndroidやFirebase Analyticsで使用できます。
RAD Studio 12.2の品質改善
デバッガの品質改善
RAD Studioデバッガにさまざまな改善が行われています。特にDelphiデバッガでは、同じ名前を繰り返すインライン変数を正しく処理できるようになりました。
またデバッガのエラー処理とリモートデバッガの通信タイムアウトについても改善されました。
Delphi LSP
CodeInsight機能の基盤として機能するDelphi LSPエンジンは、クラスインターフェース内のシンボル(フィールド、ローカル定数、変数など)や前方型宣言でのシンボルの自動補完とナビゲーションの改善に重点を置いて、コアとなる基盤とともに拡張が施されました。またDelphiの複数行文字列に関連するものも含め、多くのリクエストに対応しました。
さらに、EnterpriseおよびArchitect版には、64-bitバージョンのDelphi LSPエンジンも搭載。メモリ制限なく大規模なコードベースをサポートするよう強化されました。
Delphi RTL、VCL、FireMonkeyの品質
RAD Studio 12.2では、コアのDelphi RTLと、VCL / FireMonkey UIライブラリの双方で数多くの改善が行われています。特筆すべきは、RTLの新しいTParallelArrayクラスとTOrderedDictionaryクラス、VCLのフレームのスケーリング、FormsTabBar、スタイルの問題、High DPI問題に関する品質向上、FMXのさまざまな領域での品質向上、モバイルでの編集コントロールへの追加のフォーカスなどです。
RAD Serverの改善
RAD ServerによるWeb サービス開発機能にWeb開発機能を追加するWebStencilsの統合に加え、12.2ではRAD Serverに、カスタムメタデータ、APIフィルタリング、YAML形式、Delphi複数行文字列リテラルの使用に対応したSwagger Documentationサポートの拡張が追加されています。
品質改善や要望への対応
RAD Studio 12.2では、88件のサポートチケット、お客様から報告された350件の新旧Quality Portalケースの対応、28件のお客様からの機能リクエストなどの品質改善や要望に対応いたしました。
RAD Studio 12.2 Athensのリリース情報
本日より、RAD Studio / Delphi / C++Builder 12.2の無料トライアルをダウンロードできるようになりました。またアップデートサブスクリプションまたは上位のサポートプログラムに加入されている方は、既存のライセンスを使用してRAD Studio、Delphi、およびC++Builder 12.2をカスタマーポータルサイト(https://my.embarcadero.com)からダウンロード/インストールできます。
詳細については、以下のリンクをご確認してください。
- エンバカデロテクノロジーズの製品ページ
- DocWikiの新機能情報 – RAD Studio 12.2 Athens
- 12.2で修正されたお客様から報告された問題(英語)
- RAD Studio 12機能一覧(PDF)
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