エンバカデロでは、RAD Studio 11 Alexandria Release 3(RAD Studio 11.3、Delphi 11.3およびC++Builder 11.3)の提供を開始しました。
このリリースでは、RAD Studio 11.0から11.2の素晴らしい新機能をベースとして品質と改良に重点を置いています。
RAD Studio 11.3は、複数のオペレーティングシステムの最新バージョンへの対応、RAD Studio IDEへ新しいToolsAPIの追加によるコードエディタでのソースコードの描画方法のカスタマイズ、モバイルプラットフォーム向けの新しい生体認証コンポーネントの導入、その他いくつかの機能および強化が行われています。
今回のリリースでも、お客様からのご要望に応じて、使いやすさ、パフォーマンス、安定性など、品質に重点を置いています。品質の向上はすべての製品分野を網羅しており、特にDelphi LSPを使用したDelphi Code Insight、11.0で導入されたHigh DPI IDE、およびVCLスタイルに重点を置いています。またコンパイラとツールチェーン、DelphiとC++のRTL、VCL、FireMonkey、FireDACなどのデータベースライブラリ、インターネットアクセス、そしてDelphiとC++Builderの両方のパーソナリティを含むサービスにおいて注目すべき機能強化が行われています。
また最近リリースされたInterBase 2020 Update 4 Developer エディションとIBLite/ToGo エディションがRAD Studioに同梱されています。
Table of Contents
プラットフォームとツールチェーンの変更点
ターゲットプラットフォームに関しては、RAD Studio 11.3では、ネイティブアプリケーションを構築できる多くのオペレーティング システムの最新バージョンを正式にサポートしています。具体的には、RAD Studio 11.2 GA以降にリリースされたiOS 16(Delphiのみ)、Android 13、macOS Venturaをサポートしています。 さらにRAD Studioは、公式アプリケーションのターゲットプラットフォームとして、Ubuntu 22 LTSとWindows Server 2022もサポートしています。
品質向上のほかにも、ツールチェーンに関して注目すべきいくつかの変更点があります。
- 11.3では、新たにLLDBベースのデバッガを、macOS Intelおよび32-bit Android向けに導入しました。11.3の非Windowsプラットフォームデバッガは、Delphi / C++のいずれもLLDBアーキテクチャに移行しました。
- RAD Studio 11.3では、AppleがXCode 14から導入したmacOS向けの新しい公証プロセスを提供します。
- IDE の Windows 署名サポートにMSIX ファイルのタイムスタンプが含まれているようになりました
- C++プロジェクトで、ライブラリのサフィックスとして$(Auto)を使用することができるようになりました。
RAD Studio IDE の新機能
RAD Studio IDEには、注目すべき拡張機能がいくつかあります。
コードエディタ
IDEコードエディタでは、一致する単語を強調表示する機能が追加されました。この機能を使用すると、選択した単語、または現在カーソルが置かれている単語のインスタンスを画面上で強調表示することができます。
デフォルトでは選択した単語のみが強調表示されますが、IDEメニューの[ツール]-[オプション]-[ユーザーインターフェース]-[エディタ]の設定で、カーソル位置や隣接する単語を強調表示するように変更できます。
このリリースでは、コードエディタで描画するための新しいToolsAPIも提供されます。これは開発者がエディタの安定性に影響を与えることなくカスタマイズできるようにするための新しい基盤です。この新しいAPIを提供することで自由度の高いプラグインを簡単にコーディングできるようになるため、サードパーティベンダー間のイノベーションに拍車をかけることを期待しています。ここでは、ToolsAPIを使用して新しいエディタのガターで行番号に色を付けるデモの例(下図)を紹介いたします。
新しいAPIは非常に徹底しており、単に描画するだけでなく、エディタに関する大量の情報のクエリをサポートします、またプラグイン専用のガター領域を予約するための特別なサポートも備えています。11.3の内部エディタのいくつかの機能にもこの新しいAPIが採用されており、それによってAPIの堅牢性と適用性が実証されています。
Code InsightとDelphiLSP
Delphi LSPをベースとしたDelphi CodeInsiteも大幅な品質向上が施され、大規模アプリケーションにおいても、より高速かつ高い信頼性を実現しています。これらの改善には、全体的な信頼性向上にフォーカスしたコード補完機能や、Help Insight、コードナビゲーションが含まれており、従来はサポートされていなかった領域でのコード補完やナビゲーションが提供されます。
さらにDelphiコンパイラはXmlDocをコンパイル済みのDCUに格納するようになり、HelpInsightはこれまで表示されなかった多くの領域で情報を表示できるようになりました。
VCLフォームデザイナと High DPI
RAD Studio 11.3 では、High DPI IDE、特に High DPI 環境での VCL フォーム デザイナの品質が改善され、フレームを含む非ビジュアルコンポーネントのスケーリングが特に改善されました。またエディタ内の SyncEdit と構造フローのアイコンは、High DPIアイコンに置き換えられました。
Subversion DLL
エンバカデロではセキュリティ上の理由からSubversion DLL を製品に同梱しなくなりましたが、開発者が独自に Subversionクライアントの DLL をインストールおよび保守することをお勧めします。Subversion のバージョン管理システムを使用し、それを RAD Studio IDE から使用することを計画している場合、IDE からシームレスに接続することができます。これは、RAD Studio が提供する Git と Mercurial のサポートと統合に類似しています。
全般
最後に些細ですが便利なIDEの新機能を2つ紹介します。
- ビルド構成 (DebugやReleaseなど) を右クリックし、[エクスプローラで表示] を選択すると、現在のビルド構成の出力フォルダをエクスプローラで確認することができます。
- IDE が昇格された権限で実行されると、IDEのタイトルバーのキャプションのテキストの先頭に[管理者]と表示されるようになりました。
- Markdownファイルを複数のエディタウインドウで開くことができるようになりました。
生体認証 (バイオメトリクス)
RAD Studio 11.3 では、FireMonkey モバイルアプリケーション向けに新しい生体認証(TBiometricAuth)コンポーネントが提供されます。TBiometricAuthコンポーネントは、生体認証(iOS デバイスの Face ID や Android デバイスの指紋など)を介して、アプリケーションや特定の機能を使用するための認証手段を提供します。
モバイルデバイスとの統合を向上させる FireMonkey のもう 1 つの新機能は、Android 向けに実装された新しい IFMXPhoneDialerListenerService インターフェースです。このサービスは、電話システムサービス(Calls、Carrier、CallState)の状態の変化を追跡することを目的としています。
FireMonkey ライブラリは、ターゲットのオペレーティングシステムの最新バージョンへの対応に加え、広範囲な修正と改善が行われています。FireMonkey アプリケーションは Windows 再起動マネージャからの終了要求を適切に処理するようになりました。またWindows プラットフォームでは、より良いアクセシビリティ、TWebBrowser の統合、マルチディスプレイのサポートが提供されています。そしてiOS では TDateEdit、TTimeEdit、TComboBox のスクロールが改善されています。さらにAndroid では、DocumentFile Provider のサポートが導入され、指のスライドで TMemo 内のカーソルを移動する際の改善が行われています。
TBitmap および TCanvasクラスでは、FireMonkey Graphicsがいくつか改善されています。 Multiview (プラットフォームコントロール型使用時)、SpeedButton、Label の FocusControl、TTreeViewItem の IsChecked、TEdit (TVertScrollBar 内で使用する場合) など、多くのコントロールが修正されています。さらにUIコントロール間でのTabキーサイクルが改善されたほか、ClipChildrenでXRadiusとYRadiusが考慮されるようになりました。
全体的な品質
冒頭でも申し上げましたがRAD Studio 11 Alexandria Release 3(11.3)は、品質に重点を置いたリリースです。
Delphi RTL ライブラリの改善点の中では、Androidのメモリ割り当てパフォーマンスの改善、多数のパフォーマンス改善、ZLibライブラリ(1.2.13)を更新しています。
さらにVCL スタイルに関連する多くの VCLの問題に対処し、TouchKeyboard コンポーネントの背景のスタイル設定のサポートを強化 (下図を参照)、および複数の項目を選択する機能を含む拡張された TControlList コンポーネントを提供しています。その他にもVCLスタイルのサポートに多くの改善と修正が行われています。
FireDACでは、PostgreSQLデータベースのパフォーマンスが向上し、データベースのバージョン14およびバージョン15.1との完全な互換性が提供されるようになりました。 Oracle やその他のデータベースでは、角括弧で列名をより適切に処理できるようになりました。
そしてLinux では、データベースレイヤーはデータベース RTL (TStringField など) および FireDAC の DataSetsで UTF8 の予備的なサポートを提供します。
またHTTPとWebの分野では、11.3でTMultipartContentParserの改善、TOAuth2Authenticatorのトークン自動更新(およびOAuth2サポートのための他のいくつかの改善)、TRESTResponseDataSetAdapterのNestedElementsのサポートの向上、RAD ServerやSOAP、その他の関連サブシステムの修正などが行われました。
RAD Studio 11.3 Alexandriaでは、Quality Portalから寄せられた25以上の機能要求と、同サイトで報告された365以上のバグが修正されており、修正範囲は製品全体に渡って多岐に行われております。
Ready to Go
RAD Studio、Delphi、およびC++Builder 11.3の製品トライアルが利用可能で、オンラインストアでも11.3が公開されました。アップデートサブスクリプションをご利用のお客様は、既存のライセンスを使用してRAD Studio 11.3を本日からダウンロードしてインストールすることができます。インストーラーのダウンロードは、https://my.embarcadero.comのカスタマー ポータルから入手できます。
新リリースの詳細情報については、以下のリンクをご確認ください。
RAD Studio 11.3のリリースにあたり、開発チームが行ってきた品質フォーカスの作業に、私たちは大変満足しています。この新しいバージョンが、開発者の皆さんにも歓迎されることを期待しています。