先日、EmbarcaderoはRAD Studio 10.3.2をリリースしました。RAD Studio 10.3.2にはDelphi 10.3.2が含まれますが、Delphi単体を購入することも可能です。10.3.2は多くの優れた機能を備えているだけではなく、様々な品質改善も含まれます。その中で最も注目すべき点は新しいターゲットプラットフォームであるmacOS 64-bitの追加です。
ご承知のとおり、AppleはmacOS向けのApp Storeに対する32-bitアプリケーションの受け入れを中止し、32-bitアプリケーションの実行時には警告が表示されるようになりました。そしてmacOSの次期バージョン(Catalina)では32-bitアプリケーションが実行できなくなります。このためDelphi macOS 64-bitコンパイラ提供はプライオリティを上げて対応を進めました。Delphi 10.3.2 には64-bit macOSアプリケーションの開発に必要なライブラリとIDEのサポートが含まれます。
より正確にいうと、macOS 64-bitプラットフォーム用の新しいDelphiコンパイラはLLVMコンパイラインフラストラクチャに基づき、他のすべてのDelphiデスクトップおよびサーバープラットフォーム(macOS、Windows、Linux)と同様の非ARCモデルを備えています。macOS 64-bit向けRTLには、システムアクセスからプラットフォーム統合、メモリおよびスレッド管理、HTTPおよびRESTクライアントライブラリまで、すべてのコアファイル機能が含まれています。
もちろん、FireMonkeyライブラリを完全にサポートしており、これまでmacOS 32-bitプラットフォームで利用できたすべてのFireMonkeyコントロールが64-bitバージョンでも利用できます。
データベースアクセスについては、コアデータベースRTLとFireDACクライアントアクセスライブラリが利用でき、macOS 32-bitプラットフォームでサポートされていたデータベースはmacOS 64-bitプラットフォームでも同様にサポートされます。これにはClientDataSetコンポーネントも含まれます。ただし、非推奨となって久しいDBXドライバは提供されません。
最後に、Delphi macOS 64-bit向けのIBLiteとIBToGoのサポートが含まれます。これはFMX 64-bitアプリケーションの一部ですが、実際には32-bit版とそれほど違いはありません。
macOS向けの新機能と改良点もあります。特にmacOS公証化サポートはIDEから直接利用できます。詳細についてはhttp://docwiki.embarcadero.com/RADStudio/Rio/en/MacOS_Notarizationやhttps://developer.apple.com/documentation/security/notarizing_your_app_before_distributionをお読みください。
注目すべき違いがもう一つあります。これまでにリリースされたバージョンのDelphiと比べると、macOS 32-bitと64-bitの両方についてシステムメニュー項目がマージされていることがその違いです。メニューバーのアップルアイコンのすぐ後ろに表示されるアプリケーションメニューに、システムメニュー項目(Service、非表示、他を非表示、終了)が自動的に追加されます。これを開発者自身が追加する必要はありません。またTMainMenuで最初に表示されるメインメニュー項目に子項目を使用してアプリケーションメニューに項目を追加できます。