この記事は、Ian Barker氏のブログの抄訳です
ソフトウェア開発で最も難しい点は主に2つあり、1つ目はプロジェクトが完成するまでの期間を見積もること、2つ目はプロジェクトのバグ検証にかかる時間を見積もることです。テクノロジーの進歩により、これらの課題はさらに複雑化し、難解になってきています。アジャイルテストのオートメーション(以下、自動化)は、非常に具体的な方法でこれに対処しようとするものです。
高度に繋がり合う今日の社会では、人々は複数の種類の電子デバイスを所有しており、ますます多様化するテクノロジー、画面サイズ、ハードウェア機能でアプリを使用する可能性があることは事実です。単一のコードベースからこれらのデバイスをターゲットとすることができる適切なクロスプラットフォーム開発ツールを選択することが、最も賢明な選択です。
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なぜクロスプラットフォーム開発は難しいのか?
競争の激しい世界では、お客様のニーズに応えられるクロスプラットフォームであることが、アプリの成功の最大のポイントです。ハードウェアやオペレーティングシステムのあらゆるバリエーションをテストし、潜在的なバグをチェックするのは、膨大な作業です。
開発期間やテスト期間の見積もりも、単なる推測だけでは困難です。さらに、デバイスの機能が進化するたびに、新しい画面タイプ、より高い画面解像度、曲げられるスクリーンのようなフォームファクターによって、負担が積み重なっていきます。
アジャイルテストの自動化は、クロスプラットフォーム開発にどのように役立ちますか?
アジャイル開発技術、特にアジャイルテストツールは、開発とテストのタスクを軽減し、その多くを自動化することができます。適切なテスト、特に自動で適用されるテストは、品質の向上と維持に役立ちます。これらをアジャイル開発手法と組み合わせると、進捗状況を測定するのにも役立ち、ワークロード(作業量)を正確に見積もるための基礎が得られます。
クロスプラットフォームアプリ開発とは?
クロスプラットフォームアプリ開発とは、デスクトップとモバイルの両方のデバイス、およびそれらのデバイス上で実行されるオペレーティングシステムで動作できるアプリを作成するプロセスです。デスクトップではWindows、macOS、Linux、モバイルではAndroid、iOSがこれに該当します。 これらのカテゴリは、デバイスの「フォームファクター」へさらに分類できます。例えば、Windowsデバイスは、キーボードとマウスを備えた従来のデスクトップコンピュータかもしれないし、タッチスクリーンキーボードを備えたタブレットかもしれません。
クロスプラットフォームのアプリ開発で、モバイル端末だけをターゲットにすれば簡単ですか?
AndroidとiOSの場合も同様で、対象となるハードウェアはモバイルスマートフォンまたはタブレットになりますが、Microsoft Windows 11ではAndroidアプリがネイティブで動作するようになり、AppleのデスクトップパソコンではiOSアプリが動作するようになったため、その区別すら曖昧になってきています。ユーザーの利便性が向上するたびに、開発者の肩に重荷がのしかかります。品質管理のプロセスは、アジャイルテストの自動化が望ましいだけでなく、実質的に不可欠な変曲点に達していることは明白です。
アジャイルテストの自動化とアジャイル開発の関係は?
アジャイル開発とは、ソフトウェア開発のプロセスに関連した概念で、大文字の「A」がついています。アジャイル開発手法は、特定の機能の開発にかかる時間を正確に見積もることに内在する困難に対処することを目的としています。アジャイルテスト自動化では、「アジャイル」という用語を使用して、柔軟で適応性の高いテストアプローチを表現します。これは、アジャイル開発が、製品バージョンがリリースされるまでに何週間、何ヶ月、あるいは何年もかかるような、よりモノリシックで厳格なウォーターフォール開発戦略と比較して、より柔軟なソフトウェア開発手法となります。
アジャイル手法を使用することで、時間やコストの見積もりにどのような効果があるのでしょうか?
アジャイル開発では、「実行可能な最小限の製品」という概念を重視し、機能、改善、バグ修正などの要素を、難易度を割り当てられる単位に分割します。
これらの「チャンク」は、一般に「バックログ」と呼ばれる完了すべきタスクのリストを作成するために使用されます。そして、プロジェクトマネージャーやチームが、メンバーに対して作業する項目を割り当てます。 チームは、難易度や依存関係に基づいて、作業項目を均等に配分します。
各要素の難易度は、「ケイデンス」と呼ばれる反復作業の過程で使用され、ケイデンス中に達成された特定の難易度の項目の数を測定します。そして、難易度とかかった時間の指標をもとに、同様の難易度に近い要素の見積もりが可能となります。
アジャイル手法は、ソフトウェア開発者の作業速度を測定するのにどのように役立ちますか?
各ケイデンスは、すべての項目が完成していなくても、できるだけ多くの完成項目を含む「実行可能な最低限の製品」を作るために使用されます。多くのチームは、2週間、3週間、または4週間ペースのケイデンスを使用しています。
チームは、そのケイデンス中に完了した項目、または完了しなかった項目の量をレビューし、その指標の結果として次のケイデンスの割り当てられたタスクの数を増減します。このように、バックログを完成させるまでの推定時間を示す指標は、チームの「ベロシティ」と呼ばれ、特定の機能がいつ利用可能になるかについてかなり正確な推定を与える傾向があります。
またチームは特定の新しい項目が今後のチームの取り組みに与える影響を見積もることができるため、機能の追加または削除も容易になります。
アジャイルテストの自動化は、品質向上や見積もり精度を上げるために、どのような役割を果たしますか?
このような方法で作業する開発者は、一般的にユニットテストなどの自動化を利用し、作業中の個々のタスクが「完了」という最低限の要件を満たすことで確認できます。この種のテストには、「モック」インターフェース、テストフレームワーク、その他の専門技術が含まれる場合があります。
テストが成功した場合、その機能が許容できる可能性が高くなります。より正確に時間を見積もることができるので、機能項目の追加および削除、そして自動テストのおかげで各ケイデンスが良質な作業用「ビルド」を提供することができるため、このコンセプトが「アジャイル」であると考えられる理由です。製品がおよそ 1〜 2 年単位ではリリースされない従来の「ウォーターフォール」アプローチよりも、より頻繁かつ高い柔軟性で、「実行可能」かつ「販売可能」な成果物を作成できます。
アジャイルテストの自動化とは何ですか?
アジャイルテスト自動化とは、アジャイル開発でテスト自動化または自動テストを行うことです。アジャイル開発は、反復開発を基本とし、継続的な計画、改善、学習、コラボレーションを行うものです。言い換えれば、アジャイル手法では、反復して作成される機能的なソフトウェアを継続的に提供することになります。 アジャイル手法の主な目的は、高品質の製品を、測定可能なタイムスケールで、測定可能な速度(よく「ベロシティ」と呼ばれる)で迅速に提供することです。
アジャイルモデルでは、開発者と営業担当者からなる小規模で組織的なチームが、開発プロセスを通じて定期的に会合するのが一般的です。
テスト自動化または自動テストとは、自動テストツールを使用してテストを自動的に実行し、テスト結果を分析するプロセスのことを指します。既に存在する不具合の特定と確認に重点を置き、エラーとコストの削減に役立ちます。
アジャイルテストの自動化は、いつ、どのように導入すればよいのでしょうか?
自動テストは、アジャイルモデルに基づく動的で変化の激しいプロジェクトではなく、最小限の変更を伴う安定したアプリに最適です。したがって、自動テストのいくつかの原則は、アジャイル手法とは対照的です。
しかし、アジャイルソフトウェア開発における自動テストは、きちんと計画を立てて準備すれば、効果的に実施することができます。例えば、アジャイルプロジェクトのすべてのテストケースが自動化に適しているわけではないので、どのようなテストケースを自動化すべきかを知ることが重要で、さらにテストは並行して実施するのがベストです。アジャイル環境では、テストには開発プロセスとテストとの継続的な統合が必要です。
アジャイルテストの自動化は、テスト結果の迅速化、生産性の向上、高品質な製品の迅速な提供を可能にし、コスト削減にも貢献します。
高品質なクロスプラットフォームアプリを迅速に開発するために、アジャイルテストの自動化が重要なのはなぜですか?
アジャイル手法の主な目的は、高品質のソフトウェアをより迅速に構築することです。しかし、アジャイル環境では、ソフトウェアやアプリは反復して開発され、新しい機能が継続的に追加され、テストが継続的に行われます。膨大なデバイスの種類やオペレーティングシステムの種類に応じて、アプリの各機能のすべてバリエーションを手動でテストすることは、不可能に近いです。そこで必要になるのが、アジャイルなテスト自動化です。クロスプラットフォームアプリの開発効率を向上させ、ソフトウェアテストはすべての段階で行われるため、初期段階でバグを検出して修正し、高品質のアプリを構築することが容易となり、費用対効果にも優れています。
クロスプラットフォームアプリ開発に最適なフレームワークはどれですか?
Embarcaderoの RAD Studioは、高品質で高性能なクロスプラットフォームのネイティブアプリを作成することを目的とした、優れた開発環境です。単純なコード エディタとは異なり、RAD Studioは専用の統合開発環境であり、エラー インサイト、コード補完、インテリジェント マクロ、コード テンプレートなどの組み込みなどの組み込みインテリジェンスと支援技術を備えており、パワー ユーザー向けの時間節約機能を提供します。
RAD Studioの特徴は?
- RAD Studioは、iOS、Android、Windows、macOS、Linux向けのアプリを作成するための単一のコードベースを提供します。効率的なクロスプラットフォームのFireMonkey FMX UIフレームワークとランタイムライブラリによって開発者はiOS向けのアプリを作成し、コードの大部分をAndroid、macOS、Linux、Windowsの異なるOSで共有することができます。つまり、開発者は各プラットフォーム向けにゼロから別々のコードを書く必要がありません。
- RAD StudioのFireDACは、組織のデータベースに接続されているさまざまなデバイス向けのアプリの作成を支援するユニバーサル データ アクセス ライブラリです。 その強力なユニバーサル アーキテクチャにより、DelphiおよびC++BuilderからMySQL、SQL Server、InterBase、SQLite、PostgreSQL、Oracle、DB2 などへ直接アクセスできます。
- RAD Studioで構築されたアプリは、ほぼすべての主要なプラットフォームでネイティブに動作します。
- RAD Studioはマルチデバイスのプレビューが可能で、iOSやAndroidのシミュレーターと効率的に連携して、アプリの設計画面を調整できます。
- また、クロスプラットフォームアプリを開発するための強力なビジュアルデザインツールを提供します。
- RAD Studio のenterprise connectorsは、SAP、Jira、Office など、90 以上の主要なエンタープライズ・システムとの接続が可能です。
RAD Studioでアジャイルテストの自動化のために利用可能な具体的な機能は何ですか?
RAD Studio のインストール時、オプションで自動テストフレームワークの DUnit も同時にインストールすることが可能です。DUnit はRAD Studio IDE 環境に統合できるため、数回のクリックでテストプロジェクトを簡単に作成できます。Delphiを使用したRAD Studioの開発者は、DUnitX フレームワークの使用を選択することもできます。
DUnitやDUnitXを使用することで、アジャイルなテスト自動化プロセスを実現し、アプリの出荷前に気づかれない多くのエラーを検出することで、コード全体の品質に大きく貢献します。また、優れたユニットテストを作成することで、コードがエラーなく動作していることを簡単に確認することができます。
優れたコーディング手法、ユニットテスト、便利なIDE、そして単一のコードベースからできるだけ多くのデバイスをターゲットにできる開発環境を組み合わせることが、クロスプラットフォームアプリ開発には最適で、RAD Studioは、これらのすべての要件を満たしています。
アジャイルテストの自動化で管理するのは、どのような種類のテストでしょうか?
アプリ設計のプロセスの一部では、アプリが正しく動作しているときにどのように振る舞うべきかを理解することも重要で、「完了」という定義で呼ばれることがあります。同様に、どのような動作が望ましくないか、あるいは正しくないかを知ることも重要です。
ユニットテストは、プログラムのコードの個々のクラスや項目の正確さを評価するものです。 ただし、実際にはアプリが全体としてやるべきことをやっているか、オペレーティングシステムやハードウェアの他の要素と「うまく」連携しているか等、あくまで機能テストや統合テストの補助的なものにすぎません。すべてのユニットテストを見事にパスし、構文エラーや警告もなくコンパイル可能な完璧なプログラムでも、実際にデバイス上に存在し、実際のエンドユーザーに使用されるようになると、まったく役に立たなくなることがあります。
“私の環境(マシン)では動作する “というのは決まり文句かもしれませんが、非常に正しいことでもあります。アジャイルテストの自動化は、おそらく不満を抱いたユーザーに対して謝罪する機会を少なくすることができるでしょう。
テスト管理、アジャイルテスト管理に最適なツールは?
Embarcaderoと同じIderaの傘下であるGurockが提供するTestRailは、テスト管理におけるスタンダードとなりつつあります。テストプロセスを合理化することで、予期せぬ事態が発生することなく、期待通りに動作する高品質のソフトウェアを作成することができます。TestRailを使用すると、再利用可能なテストケースをフォルダに整理し、テスト実行の進行状況をリアルタイムで追跡できます。 またユーザーはアジャイルなテスト計画を作成することもできます。効率的で使いやすいインターフェースと、、テスト管理専用に構築された対話型ダッシュボードが組み合わされています。さらに、TestRail APIを使用して、TestRailを他のいくつかのツール、サードパーティアプリ、およびフレームワークと統合することができます。
アジャイルテスト自動化のためのTestRailの主な機能は何ですか?
テスト管理とアジャイルテスト管理のためのTestRailの主な機能を紹介いたします。
- テストケースを迅速に作成し、カバレッジを評価できます。また、テストを GitHub Issues、Atlassian Jira、GitLab などの要件や不具合にリンクさせることができます。
- トレーサビリティレポートを迅速に生成でき、チーム メンバー全員がテストのステータスと進行状況をリアルタイムで確認できます。
- すべてのテストアクティビティと品質メトリクスを単一のプラットフォームで簡単に監視できます。
- JIRA、Jenkins、Seleniumなど、多くのプロジェクト管理ツールや自動テストツールと簡単に統合できます。
- アジャイルテストケースもサポートしています。アジャイルテストケースを簡単に整理、スケジュール、追跡し、テストプロセスを合理化できます。例えば、ユーザーはテスト実行を計画で整理し、反復の結果を追跡できます。
- テスト実行を開始し、テストケースを選択するための強力なフィルタを提供します。また、結果を効率的にグループ化、フィルタリング、整理できます。
- Webブラウザやモバイルデバイスなどのテストを簡単に追跡できます。
TestRailには、TestRailのオンライン版である「TestRailクラウド」と、Windows ServerまたはLinuxへインストール可能な「TestRailサーバー」の2つのバージョンがあります。14日間の無料トライアルにサインアップして、TestRail の優れた機能をすべて試すことができます。さらに、TestRail を使い始めるのに役立つ詳細なビデオチュートリアルもあります。
まとめ
複雑化し、競争が激化する今日の世界では、開発者や企業は、品質を犠牲にすることなく、できるだけ早くクロスプラットフォーム対応のアプリケーションを作成する必要があります。ユニットテストフレームワークが統合されたRAD Studioのようなローコードのクロスプラットフォームアプリ開発ソリューションと、TestRailのようなアジャイルテスト自動化ツールを組み合わせて使用することは、「成功への大きな鍵」となります。アジャイルテスト自動化を導入することで、クロスプラットフォームアプリ開発プロセスを強化し、潜在的な問題をユーザーへ届く前に発見して品質を向上させることができます。 金融や医療用ソフトウェアなど一部の業界では、適切な検証可能なテストが望ましいだけでなく、法律や契約上の要件となる場合もあります。またそれ以外の業界においても、アジャイルテスト自動化の利点が、さらなる品質向上を行うためにどのように役立つかを考えるには非常に理にかなっています。
FAQ
アジャイルにおける自動化テストとは?
アジャイルでの自動テストにより、チームは新しいコードが追加されるたびに自動的に実行されるテストケースを作成できます。
アジャイルで自動化テストを導入するにはどうしたらいいのか?
アジャイルな自動テストでは、アジャイルを適切に計画し、準備することが不可欠です。 アジャイルプロジェクトのすべてのテストケースを自動化できるわけではありませんが、回帰テストを自動化し、並行テストを実施することが重要です。
アジャイルにおいて、なぜテスト自動化が重要なのか?
アジャイル手法では、新機能が追加されるたびに継続的なテストが行われますが、これらのテストを手動で実施するのは非常に複雑で時間がかかります。 その結果、アジャイルテストの自動化が必要になります。