サイトアイコン Embarcadero RAD Studio, Delphi, & C++Builder Blogs

RAD Studio 11.2 Alexandria リリースのお知らせ

11 2 title

エンバカデロでは、RAD Studio 11 Alexandria Release 2(RAD Studio 11.2、Delphi 11.2およびC++Builder 11.2)の提供を開始しました。

RAD Studio 11.2には、macOS ARM 64上でのDelphi向けiOSシミュレーターサポートのほか、Delphi LinuxデバッガのLLDBベースへの移行、Markdownサポートやコードエディタの非アクティブコードのハイライトなど、ユーザーから寄せられたさまざまな改善点を含むIDE新機能が含まれます。

これら新機能の追加があるものの、このリリースは、お客様から要望の多かった、使いやすさ、パフォーマンス、安定性といった点での品質にフォーカスしています。品質重視は、IDE、コンパイラとツールチェーン、UX、RTL、データベース、インターネットライブラリといったすべての製品領域を網羅し、DelphiとC++の双方の言語をカバーしています。

このブログ記事では、RAD Studio 11.2で追加された主な新機能について、最も関連する品質向上を含め紹介します。

プラットフォームとツールの変更

Delphi iOSシミュレーター

RAD Studio 11.2は、Delphi言語でiOSシミュレーターのサポートを提供しています。このサポートでは、ARM-64(M1 または M2)で実行されているmacOSデバイス用のiOSシミュレーターバイナリを生成する機能が含まれます。これにより開発者は、Delphiアプリケーションを実際のハードウェアデバイスを用意することなく、異なるAppleデバイスの複数のフォームファクターでテストすることが可能になります。

Android API Level 32

このリリースでは、Anroid API Level 32にIDEターゲットをアップデート(11.1のAPI Level 30からアップデート)しました。これにより、2022年11月から必要となるGoogle Playの要件に適合できます。インストーラもアップデートし、最新のAndroid SDKツールに必要となるEclipse Temurin JDK 11に対応しました。

Delphi for Linux向けのLLDBサポート

従来はGDBベースのデバッガを搭載していたDelphiのLinuxツールチェインが、11.2でLLDBベースに変更されました。これにより、機能面とDelphi言語構文のサポートの両面で、大幅な機能強化が実現しています。LLDBは、バージョン12にアップデートされ、従来からのC++ Win64、Delphi macOS、iOS、Android 64プラットフォームに加え、iOSシミュレーター向けにも導入されています。

IDEの改善

RAD Studio IDEでは、残存していたInternet Explorer ActiveXコントロールへの依存関係をすべて削除しました。これに関連して、新たに組み込まれた2つの新機能があります。新しいMarkdownおよびHTMLプレビュー、そして再搭載されたXSLTおよびCSSをベースとしたHelp Insightです。

MarkdownドキュメントのIDEサポートとVCLベースのHTMLプレビュー

Markdown(.md)ファイルを開いて編集できるようになりました。ファイルは、プレビュータブでリッチテキストにレンダリングされた状態を見ることができます。Markdownレンダリングには、テーブルや他の特別なタグのサポートも含まれます。

同様に、HTMLファイルもIDE内でVCLベースの新しいネイティブビューワーにより表示をサポートしました。Markdownと同様に、HTMLをプレビュータブで編集することはできませんが、コードエディタでの編集は可能です。

さらに、プロジェクトページオプションダイアログでは、Markdownファイルを、プロジェクトページやReadme用のHTMLファイルの代わりとして用いるよう指定でき、これらは、RAD Studioでプロジェクトを開いたときに自動的に表示されます。

Help InsightのXSLT変換サポートの復活

Help Insightは、VCLベースのHTML表示コントロールを使用するようになり、コンパイラによって返されたXMLDocデータをXSL変換で処理し、表示用のCSSスタイルを適用したHTMLを生成します。10.3以前のバージョンと同様に、XSLTおよびCSSファイルはカスタマイズ可能です。これにより、フォーマットに関して、より可読性を高められるようになり、ユーザーによるコンテンツとレイアウトの変更が可能になりました。

Code Insight / LSP関連の拡張としては、コード補完とツールチップインサイトで、カラー定数にカラープレビューが表示されるようなりました。

コードエディタの非アクティブコード

特定のプラットフォーム向けであったりその他の理由のため、条件付きコンパイルコードを使用することは一般的な手法です。Delphiのコードエディタでは、未定義マクロによってコンパイルされない非アクティブコードが、コンパイルされるアクティブコードとは別の表示になるように変更されました。複雑な IFDEFを使用している場合は、この機能を用いることで、現在のプラットフォームとビルド構成でアクティブであるコードを、すぐに把握することができるようになります。

以下は、異なるシナリオで、使用されていないユニットがグレーアウトされています。

非アクティブなコード領域のすべてのコード、選択範囲などのマークアップは、通常のコードと比較してやや抑えた半透明カラーで描画されます。コードとエディターのマークアップは、すべての構文強調表示や書式設定を保持し、非アクティブであることを表す半透明のレンダリングを追加するだけです。

C++BuilderのCode Insight

RAD Studio 11.2には、11.1.5のC++ Code Insightアップデートで提供された拡張機能がすべて含まれています。

cqueryの大幅な改善に加えて、このリリースでは[ツール|オプション]ダイアログで、LSPの動作をより適切にカスタマイズできる機能が用意されました。これにより、新しいプロジェクトを開くときにサーバーを再起動したり、エディター内のファイルのみにインデックスを付けるか、プロジェクトグループのすべてのファイルにインデックスを付けるかを選択することができるようになりました。

エディタータブの強化

RAD Studio 11.2では、エディタータブにいくつかの新機能が追加されました。さまざまな種類のファイル (通常のソースコード、デバッグ中に開いたファイル、構成ファイルなど) のタブを、さまざまな色で表示できます。このカスタムカラーは、見やすさなどの理由からオフにすることもできます。

さらに、タブ上の [X](閉じる)ボタンの表示が任意となりました。ファイルが読み取り専用で編集不可の場合、南京錠のロックアイコンが表示されるようになりました。これらのビジュアルサインによって、IDEエディターでの編集作業の生産性を大幅に向上させることができます。

GetItパッケージマネージャー

GetItでは、「言語(DelphiまたはC++)」でフィルタをかけることができるようになりました。この新しいフィルターにより、Delphiパッケージのみ、またはC++Builderパッケージのみを表示させることができます。

ダイアログは、両パーソナリティがインストールされた RAD Studio(Delphi または C++Builder ではない)を使用している場合にのみ表示されます。新しいフィルタでは、Delphi パッケージのみ、または C++Builder パッケージのみを一覧させることができます。この機能は、(DelphiまたはC++Builderのみではなく)RAD Studioを利用している場合のみ有効になります。

さらに、ローカルGetItパッケージのサポートを追加しました(この機能を用いるには、有効なアップデートサブスクリプションが必要です)。GetItダイアログのサイドバーの下にある[ローカル パッケージの読み込み]ボタンを使うと、ローカルのJSON構成ファイルとして提供されるDelphiパッケージをインストールできます。これにより、セキュリティやその他の理由でインターネットに接続されていないコンピューター上のRAD Studioに、ダウンロードしたパッケージをインストールすることができます。また、自社向けのカスタムパッケージを作成し、複数台のコンピューターへのカスタムインストール作業を合理化することもできます。

ウェルカムページの改善

ウェルカムページに、[GetItでの新情報]ペインが再び含まれるようになりました。また、「新しいプロジェクトを開いたらウェルカム画面を閉じる」チェックボックスの動作を改善し、すべてのプロジェクトが閉じられた際に、ウェルカムページが再度開かれるようになりました。

その他のIDE機能強化と品質改善

ライブラリ機能と改善

Delphi RTLライブラリ

RAD Studio 11.2のDelphi RTLライブラリでは、ZLibがバージョン1.2.12にアップデートされたほか、「別のストリームの一部分の範囲」を表し、プロキシとして機能する新しい TProxySubrangeStreamクラスが新たに用意されました。また、PCRE正規表現エンジンは、有効なJITでコンパイルするため、パフォーマンスが大幅に向上します。その他に、RTTI関連の改善点などが含まれます。

VCLライブラリ

本リリースのVCL ライブラリには、TEdgeBrowserコンポーネントとTWebBrowserコンポーネントの双方で、Microsoft WebView 2コントロールの使用に関する改善が含まれており、UserDataFolderとExecutableFolderの構成サポートが強化されています。これにより、よりセキュアなエンタープライズ環境での使用を含む、WebView 2コントロールを用いたアプリケーション配置の柔軟性が向上しました。また、CardPanel、NumberBox、RichEdit、ListView、DateTimePicker、BalloonHintコンポーネントの品質も改善しています。

FireMonkeyライブラリ

このリリースでは、二次ベジエ曲線コマンドやその他の変換など、TPathDataの処理とレンダリングが、品質とパフォーマンスの両面で大幅に改善されています。これにより、ListviewコントロールでのDynamicAppearance、Windows上のTVideoCaptureDevice、Metalドライバー、いくつかのメモリリーク、iOSステータスバーの暗いアイコンのサポート追加などの問題に対応しました。

FireDACライブラリ

FireDACライブラリには、最新のMicrosoft ODBC Driver for SQL Serverのサポート、MongoDBの新しいトランザクション機能のサポート、FDMonitorおよびFDExplorerツールに加えられた数多くの改良、FireDAC SQLテキストプロパティエディターにおける、SQL構文強調表示のサポートなど、数多くの機能強化が加えられています。さらに、dbGo(古いADO)プロジェクトをFireDACに移行するための、reFindファイルも提供されています。

RAD Server

RAD Serverでは、認証トークン/セッションの有効期限オプションの追加、RAD Server Liteにおける誤った 2ユーザー制限の削除、IPアドレスとDateTimeの RAD Serverログへの追加、EMSFireDACClientコンポーネントによるクライアントアプリケーション作成の簡素化などの機能改善が加えられています。

品質フォーカス

ここで紹介した機能追加や品質改善は、RAD Studio 11.2の全体的な品質改善作業のほんの一部にすぎません。実際、一部の機能は、一連の品質向上作業の結果もたらされたものです。例えば、Markdownサポートは、IDEからInternet Explorer ActiveXコントロールを削除し、代わりとなるHTML/Markdown VCLコントロールによって導入されました。

RAD Studio 11 Alexandria Release 2 は、品質フォーカスのリリースです。全体では、Quality Portalで提起された30件を超える機能要求を実装し、同サイトで報告された420件を超えるバグを修正しています。これは、すべての製品領域に及びます。

Ready to Go

RAD Studio、Delphi、C++Builder 11.2のトライアル版がダウンロードできるようになり、オンラインストアでも新リリースをお求めいただけるようになっています。アップデートサブスクリプションに加入されているお客様は、お持ちのライセンスを用いて、RAD Studio 11.2にアップデートすることができます。11.2のダウンロードは、新しいカスタマーポータル(https://my.embarcadero.com)からどうぞ。

新リリースの詳細情報については、以下のリンクをご確認ください。

RAD Studio 11.2のリリースにあたり、開発チームが行ってきた品質フォーカスの作業に、私たちは大変満足しています。この新しいバージョンが、開発者の皆さんにも歓迎されることを期待しています。

モバイルバージョンを終了